診察室では伝えきれないこと Vol.96~愛媛経済レポート~令和5年2月号

~診察室で伝えきれないこと~

愛媛経済レポート

令和5年2月号に掲載されたコラム

意外と見逃される「三叉神経痛」

 右の耳が痛い!と言われていた人が顎関節症だった。上の歯が痛い!と思っていたら、実際は上顎洞炎だった。

 意外とよくある話。今回は、その中でも歯科医師が関わることが意外に多い、でも知られていない「三叉神経痛」についてお話したいと思います。

 三叉神経痛は、激しい痛みが特徴の神経障害性疼痛。「めちゃくちゃ痛い!」にも関わらず、大きく腫れたりしないため、臨床現場では診断が見落とされがちな疾患の一つでもあるとされています。

 先日、歯科の雑誌をパラパラとめくっているとこんな記事を目にしました。

 2000年に設立された頭痛、顔面痛の国際的オープンジャーナルの論文によると、三叉神経痛と最終診断された患者様の中で、診断前に最初に受診していたのは内科開業医(43.1%)、次いで歯科医(30.4%)、神経内科または頭痛専門医(14.7%)。

 歯科医が30%を超え2位を獲得しています。そして、残念ながら全体で初診時に適切な診断を受けたのは17.6%しかいなかったとのこと。

 実は2件目に相談した医療機関でも、やはり歯科医は神経内科医についで多く21.4%。そして注目すべきは初診時、痛みの原因の43%は歯科疾患とされていること。

 本研究から歯科医師の役割の重要さがよく分かります。口腔内を専門とする歯科医師として、むし歯や歯周病、顎関節症等の歯科疾患との鑑別診断を含めて「かかりつけ医」としての責任を感じた論文でした。

 2022年年末に行われた松山歯科医師会の勉強会でも三叉神経痛がテーマになったこともあり、今回取り上げさせていただきました。それではまた次回!