診察室では伝えきれないこと Vol.93~愛媛経済レポート~令和4年11月号

~診察室で伝えきれないこと~

愛媛経済レポート

令和4年11月号に掲載されたコラム

矯正治療/かみあわせ/咬む力

 

 「Predictability=予測可能性」の高い治療を求めて

 歯科医師に「歯を長く持たせる究極の秘訣は?」聞くと「炎症」と「力」のコントロールと多くの方が答えるでしょう。では「炎症」と「力」のコントロールとは何か?

 「炎症のコントロール」は基本的には細菌感染からのコントロールです。例を挙げると「歯周病細菌」からの感染を守る、コントロールしていく。そのための定期的なメインテナンスだったり、お口の中を感染しにくい環境に整えたり、患者さん自身が行うブラッシングだったり。

 では「力」のコントロールとは?これが臨床を行う歯科医師にとって最も悩ましいコントロールのうちの一つ。人間の咬む力は平気で100kgを超えると言われています。「歯周病の治療もうまくいった」「被せ物もうまくいきそうだ」なんて思っていても、長期的に見ると明らかに「力の要素」で歯が崩壊していくことが少なくありません。「絶対歯磨きしっかりしてね」とは言えても「絶対夜間無意識に食いしばることをやめてください」とは言えないからです。

 力のコントロールの方法は色々あるのですが、本日は一つの方法を示します。意外かもしれませんが、解決策の一つは「矯正治療」。

 矯正治療は真っ直ぐ歯を並べる!審美的というイメージがあるかもしれませんが、あれは実は機能美です。機能的に理想的な歯並びを神様が追求すると、見た目もキレイになります。理想的な歯並びは顎をギシギシ横にズラすと上下の奥歯は逃げるように離れていきます。顎を横に動かす事による歯や歯周組織、顎関節のダメージはテコの原理により奥歯で当たれば当たるほど大きく、前歯で当たれば当たるほど小さくなります。

 本当に私たちの身体は素晴らしく合理的にできています。この「上手く力を逃すかみあわせ」を達成する一つが矯正治療。力のコントロールにより歯のダメージを少なく、長期的に予測可能性の高いお口の中の環境を作るために、私も矯正治療の提案は多く行っています。

 


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