診察室では伝えきれないこと Vol.92~愛媛経済レポート~令和4年10月号

~診察室で伝えきれないこと~

愛媛経済レポート

令和4年10月号に掲載されたコラム

歯周再生療法/マイクロスコープ/歯周病

 

 歯周再生療法の世界

 「今後、歯科での抜歯基準は大きく変わるだろう」。

 そう言われて数年、歯周病に関しては歯周再生療法の発展により大きく抜歯基準が変わり始めています。抜歯宣告された歯にあえて再生療法を行い、どれくらい保存できるか実験した論文もあるくらい。ある一定条件を満たせば「失った骨は元に戻らない、進行防止のみ」とされていた歯周病の病態が「健康な状態に戻る」ことを可能にする再生療法。今月は歯周病再生療法の話題をお話します。

 歴史的経緯は論文を振り返ると1950年辺りからありますが、再生療法を大きく前進させたのが2000年頃の「エムドゲイン」を使用した治療法。そして数年前に「日本発の歯周組織再生医薬品」である「リグロス」を使用した治療法が保険適応となり、日本で一気に普及した感があります。従来の歯周外科の「悪いところを取り除き歯周ポケットの減少をはかる」観点と少し違い、再生療法の歯周外科は「失われた組織を取り戻す」こと。

 「非常に戦略的な外科処置」が要求されるため、1ミリメートル歯肉を切開するのにも10パターン近く切開の方法があったり、色んなアプローチの論文があったり、歯科医師のやり甲斐も大きい(難しい)。手術を成功させるキーファクターの一つとして「可能であれば切開範囲を狭く」、場合によりほとんど切開を入れずに「歯と歯肉の隙間」からアプローチする方法も増えてきています。

 なぜか?それは「創(傷)の初期閉鎖率」が術後の結果に大きく左右することが分かってきたから。そしてこの閉鎖率に大きな貢献をしているのが「手術用顕微鏡(マイクロスコープ)」。マイクロスコープでの手術が増えるにつれて「初期閉鎖率」が明らかに向上しているのです。当院でも、2021年の治療目標の一つに「歯周再生療法、限界への挑戦」と設定していました。このコラムを書くキッカケで再度クリニック自身のモチベーションにもしたいと思います。

 


ノエルクリニック心臓血管外科歯科