診察室では伝えきれないこと Vol.71~愛媛経済レポート~12月号

~診察室で伝えきれないこと~

令和2年12月号に掲載されたコラム

虫歯/う蝕/再石灰化/脱灰

虫歯とは不平等なもの・・・なのよ

「私は一生懸命磨いているのに虫歯ができる。あの子は歯もあまり磨かないのに虫歯にならない」よく繰り広げられる会話の一つですが、残念ながらそれは事実。本日はまず「う蝕とは?」というところから、お話できればと思います。

「う蝕」というと「歯に穴が空いた状態」と想像する方が多いかと思いますが、それはう蝕の環境が作った「う窩(か・穴)」を指しているだけに過ぎません。「う蝕」の本質とは「脱灰と再石灰化のバランスが狂って、脱灰が再石灰化を上回っている状態が持続している」ことです(簡単に言うと脱灰は酸によってカルシウムイオンが溶出し歯が溶けること、再石灰化は逆にカルシウムイオンが歯の方に戻ってくること)。

いやいや、もっと簡単に行きましょう!脱灰が再石灰化を上回っている状態というのは、貯金より支払が多い状態です(笑)。つまり赤字。赤字続きだと最終的に「穴」が空き、それが皆様の想像する「う窩(か)」の状態です。生活するのに収入と支出が必要なように、脱灰と再石灰化のプロセスというのは全ての人に共通に起こります。ただ、なんとか赤字の状態は止めよう(脱灰優勢の状態はだめ)!

これが凄く大事なこと。どうしても治療(詰めたり被せたり)に目が行きがちですが、赤字の状態でどれだけ詰めてもまたすぐに穴が空きます。この事を私達も、そして患者さん達も強く意識しなければなりません。この「歯の収支バランス」はハイリスクな人、ローリスクな人それぞれ。冒頭に書いたように「虫歯とは不平等なもの・・・なのよ」です。

大切なことは、その理由が何かを知ること。そして再石灰化を促していくためには時間経過の中で評価を繰り返していくことです。やはりメインテナンスは必須。来年はこの辺りのお話を可能な限り深堀りしていきたいと思います。

それでは皆様、2021年に!


ノエル医科歯科クリニック