診察室では伝えきれないこと Vol.107~愛媛経済レポート~令和6年2月号

~診察室で伝えきれないこと~

愛媛経済レポート

令和6年2月号に掲載されたコラム

 

歯の外傷/牛乳/神経

 

外傷を受けた歯のおはなし。

 9歳のA君、彼は買ったばかりの自転車を興奮気味に運転。そして転倒し前歯を強打…経験ある方はご存知かもしれないが、その歯は紫色に変色。その後、彼は学校で「ブルーティース」と呼ばれ続けた。なぜ彼の歯は紫になったのか?1950年当時の歯科医療は彼に答えを与えてくれなかった。

 A君は、これが元で(たぶん)歯科大学に進学することを決意、歯科医師として外傷歯学の研究に没頭することとなる。のちに、外傷歯学の父と呼ばれるコペンハーゲン王立歯科大学病院の「Dr.Andreasen」の少年時代のお話。

 実は歯学部で外傷の講義はあるが、充実してるかと言えばやや疑問。しかし、歯の外傷の経験者は意外にも多く、歯のけがの有病率は永久歯列で15.2%、乳歯列で22.7%、年間の発生率は2.82%だそう。

 「正しい知識こそが、自分を救う!(周りも救う)」

 歯の専門家の端くれとして、ここからはよく質問される外傷関連の内容に答えていこうと思います。あ、佐藤がこんなこと言ってたなといつか役に立てば幸いです。

「外傷で歯が抜け落ちた場合、その歯はキレイに洗って歯科医院へいくのは正しいか?」→不正解。不正解すぎます!最も身近で最も良いのは「牛乳」なければ、口の中に放り込んで歯科医院に駆け込むのが吉。歯の再植で最も大事になるのが、根っこの表面にある「歯根膜」の存在。洗い流すと、この大事な部分を除去することになりますので、NGです。

 「歯が折れた場合神経を取らなければならないのか?」→これも不正解。受傷時に神経反応がなくても、条件次第では約50%に神経が生活反応を取り戻す、といった調査もあるほど。もちろん、歯が外傷を受け抜け落ちた場合、最初の処置までの時間が勝負になってきます。

 意外に多く経験するであろう「歯の外傷」。少しだけ、頭の片隅に知識を残しておいてください。

 


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