診察室では伝えきれないこと Vol.103~愛媛経済レポート~令和5年9月号

~診察室で伝えきれないこと~

愛媛経済レポート

令和5年9月号に掲載されたコラム

 

歯周病/口腔ケア/慢性炎症/

 

口は万病の元

 今回は「口は万病の元」という言葉の背景を考えていきます。

 この問いに応える上で欠かせないのが、歯周病と全身疾患の深い関連性です。近年、歯周病の影響が口腔内に止まらず、全身の健康にも影響を及ぼすことが様々な研究で明らかにされてきました。

 歯周病が全身に及ぼす影響のキーワードには「慢性炎症」。中程度の歯周病患者さんの持っている歯周ポケットの炎症の総面積を計算すると、手のひら位の大きさになると言われています。この炎症は、全身の健康を脅かす毒性物質を引き起こす根源となります。

 簡単に説明すると、炎症によって引き起こされる毒性物質は体内を流れる血液を通じて全身を巡り、多くの疾患の引き金となります。具体的には、インスリンの働きを阻害したり、肥満を促進したり、動脈硬化を引き起こす可能性まであります。さらに、とある歯周病細菌の持つたんぱく質分解酵素は、血液脳関門を通過しアルツハイマー病の進行を加速する要因ともなると指摘されています。その他、誤嚥によって気管支に達した細菌は、高齢者に多い誤飲性肺炎の原因となり得るのです。

 このように、歯周病は全身の病気と直接関わりがあり、その影響は極めて広範囲に及びます。私自身も医科歯科連携を行っている開業医として、糖尿病患者と歯周病の密接な関連性を普段の臨床で身をもって感じています。

 歯周病は「たかが歯茎の出血」と侮れない、全身の健康と密接に関連した問題なのです。口腔ケアはただの口腔の健康維持だけでなく、全身の健康を守る手段としても極めて重要!今度はこの事実を意識して、歯周病対策を心掛けることが求められます。まさに「口は万病の元」。

 


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