「本当に薬飲まないけんの?私、なんともないんよ。」

「本当に薬飲まないけんの?私、なんともないんよ。」

 

健診で血圧が高いため受診してみたら内服治療が必要になるかもしれないと言われ、「え!本当に?」となった、ある患者さんから発せられた言葉です。

初回は、症状がないことが多い生活習慣病についてです。

 

サイレントキラー

生活習慣病の中で有名なのは高血圧、糖尿病、脂質異常症。これらは概ね自覚症状がなく、自分では気が付きません。でも、野放しにしておくと将来重大な足かせとなります。これがサイレントキラーと呼ばれる理由なのです。20年後に自分を殺すために送り込まれた殺し屋を、何も知らずに自分が育てているようなものですね。

生活習慣病/サイレントキラー/予防

生活習慣病を早期発見したい方は積極的に健診を受けましょうね!

 

治療はいつから開始する?

先ほどの患者さんの話に戻しましょう。

「困っていないから、今はこのままでいいよ。薬飲むのはもうちょっと悪くなってから。」と結論を出す前に、生活習慣病を放置するとどうなるかを知っておく必要があります。下の図は厚生労働省の資料にあるものです。分かりやすいので、少し変えて引用させてもらいました。

 

 

高血圧を例に考えてみましょう。血圧が高い状態を放置すると少しずつ動脈硬化が進みます。ある程度進行すると、血管内では血液の塊(血栓)ができて動脈が詰まることがあります。詰まった血管では、酸素と栄養が行き届かなくなるため、その先にある組織が壊死します。心臓の動脈で起これば心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞につながります。この時点で初めて症状が出るわけですが、初めてにしてけっこう重篤です。致命的となることもあります(図の④)。命が助かったとしても日常生活は激変し、ついには要介護者となる可能性を突き付けられるのです(図の⑤)。「別に長生きせんたってええんよ」という言われる方は多くいらっしゃいます。でも「寝たきりになってもいい」とか「将来ボケてもええんよ」と言う方はいません。

 

少し怖い話となってしまいましたが、強調しておきたいのは「症状が出てからでは遅い」ということです。予防が大切ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

 

今からできること

図の青矢印は必ず右側へ向かって進みます。ですがそのスピードには個人差があります。60代で要介護になる人もいれば、百寿を迎えても血圧がちょっと高いだけ、なんて人もいます。

残念ながら、健診で指摘された段階ですでに生活習慣病を発症してしまっているか、境界域にいることになります(図の③か②)。ですので、今からできることは矢印が進むスピードを遅くすることしかありません。症状がないからといって放置することはお勧めしません。

 

 

つづく。