愛媛経済レポート:診察室では伝えきれないこと Vol.39~5月号~

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愛媛経済レポートに掲載のコラム

~診察室で伝えきれないこと~

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5月号に掲載されたコラム

根っこの治療/神経の治療

膿の袋があるので再度根っこの治療をしましょう

どれだけ手間で嫌われても、根っこの治療(神経の治療)は歯の予後を決定づける大切な治療。その治療に今回はフォーカスしていきます。タイトル通り「根の再治療の成功率は高いのか?低いのか?」

まずは有名な論文を紹介します。日本ではなく海外のデータですが(『GORNI2004』タイトルは長いので略)根っこの治療の平均成功率として(ここでは成功の定義は書きません)。

1、解剖学的構造が維持されたまま、根っこの先に病変がなければ86%

2、解剖学的構造の破壊があり、根っこの先に病変があればなんと40%

全ての平均で69%となってます。※解剖学的構造とは、根の形が維持されていると考えてください。

この論文では再治療の成功率がいかに低いか!という結論と再治療ではなく1回目の治療がいかに大事か?を強く示唆しています。もちろん再治療をすればするほど、解剖学的構造は失われていきます。当然成功率はさらに下がります。

そして私たち歯科医師はこうも教育されます。

無菌ラットによる研究により、「根っこの先の病変を起こすのは浸入した細菌叢」。根の治療においては、炎症のコントロールが重要になるが、これに関しては病原菌をいかに根絶するか、という事がポイントになる。しかし現実は徹底的に機械的・化学的な清掃を行っても、細菌の根絶はできない。このため、根の治療においては細菌との戦いという事を意識して治療に当たる一方、術者がどれだけ努力しても細菌の完全な根絶は不可能であり、ある程度の確率で失敗に向き合う事を覚悟し、次の一手を打たなければならない。

どうでしょうか?これが論文ベースに行われる基礎講義の中身です(かなり要約)。

それでは私の結論を。「根の治療にまでいかなければいいんです、本気で神経を大事にしてください」。え?もう神経の治療したことがある?「それは次は再治療しないように原因究明、原因除去を徹底すべき、いや、するしかありません」。

 


ノエル医科歯科クリニック (松山市本町6丁目中央消防署南隣)

歯科院長 佐藤 哲大