毎日新聞に掲載されました

ご報告が遅くなりましたが、毎日新聞に掲載されました。

睡眠時無呼吸症候群(SAS=Sleep Apnea Syndrome)

 

毎日新聞/睡眠時無呼吸症候群

生活習慣の改善大事

眠っている時に大きないびきをかき、一時的に呼吸が停止する睡眠時無呼吸症候群。睡眠不足になり日常生活に影響を及ぼしたり、高血圧や心疾患、糖尿病などの疾患を悪化させる危険性が高くなります。

SASの症状や要因

日本人に多く見られるのは、骨格や肥満などの要因で物理的に気道が閉塞することによって起こる閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS=obstructive sleep apnea syndrome オーサス)です。

OSASには、三つの特徴があります。①大きないびき ②睡眠中の無呼吸 ③昼間の眠気 です。その他、夜中に何度も目が覚める、起床時の頭痛や高血圧、集中力の低下、性欲の減退などもしばしば見受けられる症状です。富士山のような標高の高い山を登山する際、山頂付近になると酸素が薄く息苦しくなり心拍数が上がることがありますが、睡眠時無呼吸患者の場合、睡眠中に実際の富士登山よりも低い酸素濃度まで下がることがしばしば起こります。しかし当の本人は寝ている為にその苦しさに気づかないのです。

OSASの要因については、まず形態的な問題があります。肥満、生まれつき顎が小さい、舌の大きさや位置(主に巨舌や低位舌)、アデノイド・へんとう肥大などです。これらの形態的な原因の他、過度な睡眠薬やアルコール摂取、加齢(特に閉経後の女性)などによって上気道の筋緊張が低下して閉塞が起こりやすくなったり、睡眠時の姿勢や口呼吸など日常的な習慣なども症状悪化につながる場合があります。

肥満との因果関係について

肥満傾向の方は、物理的な影響で気道閉塞が起こりやすくなります。太ると首の周囲についた脂肪で気道が狭くなります。また、舌の肥大(巨舌)による舌根沈下や軟組織に脂肪がつことにより上気道が狭くなります。中には体重が数キロ程増えるだけで、症状が悪化する方もいます。糖尿病が合併している場合もあり、栄養指導や運動指導、生活習慣の改善を行うことが治療の第一歩です。

SASから波及する疾病群や危険性について

高血圧や狭心症、心筋梗塞、脳血管障害、糖尿病、不整脈、認知障害、逆流性食道炎などが代表的な合併症です。これらは、睡眠時に無呼吸・低呼吸を繰り返すことで酸素供給が充分に行えず、臓器に著しく負担をかけることや、睡眠中の交感神経を著しく活発化させることなどに起因していると考えられています。一番恐れられていることは、夜間の心臓突然死、脳梗塞などの重篤な問題を引き起こす可能性がある点です。

SASが引き起こす社会問題とは

無治療のSAS患者の交通事故は健常者の約7倍にまでのぼると言われています。飲酒運転と同等の事故率というデータもあります。事故は個人乗用車だけでなく、公共交通の場でも大きな影響を与えています。ここ最近では、公共交通機関企業では従業員全員に対し、睡眠検査を義務化するなどの動きも徐々に広まってきています。日中の傾眠により、作業・労働能力(集中力や判断力、記憶力など)の低下により、社会的生産性が減少するとも騒がれています。さらに、合併症の発生率が非常に高くなると、医療コストの増加により医療経済への負荷が大きくなるとも言われています。個人一人一人の睡眠状態の改善が、社会をより安全に、より豊かにしていくと言っても過言ではないでしょう。

年齢や男女別、生活習慣面での発症の特徴はありますか

SAS患者は約300万人とみられ、人口の約2%。糖尿病にかかっている患者と同じくらいの割合と言われています。一般的には肥満傾向にある40~60歳の男性に多く、女性も閉経後に増加します(女性ホルモンの低下によると言われています)。日本人の骨格は欧米人に比べて顎が小さく、奥行きも少ない傾向にある為、やせている方でも罹患しやすいのが特徴です。冒頭で述べたように、アルコールや睡眠薬の過剰摂取、口で呼吸する癖などには気をつけた方がいいですね。

診断への検査方法や診断基準を教えてください

検査は大きく分けて2種類あります。自宅で行う簡易検査と、一晩入院して行う入院検査です。いずれも医療保険の適応で、睡眠中の無呼吸状態や血液中の酸素濃度、心臓の状態などを測定します。入院検査は頭部や手足など全身にセンサーを装着し、睡眠中の脳波や体動・眼球運動なども詳しく測定することができます。

現在の治療法や歯科との連携治療をお聞かせください

当院での治療の流れを説明します。睡眠検査で睡眠時無呼吸症という診断がなされると、治療を受けることができるようになります。症状の重症度で受けられる治療法が異なります。(医療保険内で受ける場合)中等度~重度のOSASと診断された場合の治療法は、CPAP(Continuous positive airway pressure 持続陽圧呼吸療法)です。寝る前に装着し、鼻から空気圧をかけた空気を送り込み、閉塞する気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止します。装着当日からいびきは消失します。非常に効果の高い治療法です。

軽度のOSASと診断された場合はどうなるのですか

SASの検査と治療は基本的に医科で行いますが、検査により軽度のOSASと診断された場合、CPAP治療は保険適応になりません。その際、歯科に紹介することでマウスピース治療を受けることが可能になります。CPAPに比べ、マウスピースは小さく、装着するだけです。旅行や出張時に持ち運びもでき、コスト面でも気軽に治療が受けられるというメリットがあります。これは歯科でのみ治療が行えます。また、中等度以上の場合でも、何らかの理由でCPAPが使えない場合や、CPAPの効果を上げるためにマウスピースが併用される場合もあります。

また、顎の骨格的形態、舌骨の位置、気道の閉塞状態などレントゲンで分析するのは歯科医師の仕事で、最近ではあごや舌骨の筋肉などの筋機能訓練も積極的に歯科医院で行われています。セファログラム(一定の規格のもとに撮影された頭部のX線写真。治療前と治療後の比較が容易)による診断は歯科でのみ受けられます。

ただ、歯科のみではSASの診断をすることができないので、マウスピース治療を希望される場合でも、まず医科にて検査を受ける必要があります。ノエルクリニックが睡眠時無呼吸症候群に積極的に取り組む理由も、医科歯科連携により1つの医院で幅広い治療が選択出来るからです。

就寝中の出来事、ひとりで就寝する方には自覚するのが難しいかと思います。SASを疑ってみる受診のシグナルを教えてください

日中の眠気や夜間尿の頻発、不整脈の自覚、治療抵抗性高血圧、夜間から早朝の高血圧(睡眠中)、起床時よく眠れていない感じが毎日続く・頭痛などです。今は、睡眠中のいびきや呼吸状態を録音し、自動的にグラフで記録してくれる、無料のスマートフォン向けアプリ(一部有料)もあり、気軽にチェックすることが可能です。SASと疑われる症状でお悩みの方、是非、一度お医者さんに相談してみましょう!

 


ノエル医科歯科クリニック