診察室では伝えきれないこと Vol.81~愛媛経済レポート~令和3年10月号

~診察室で伝えきれないこと~

愛媛経済レポート

令和3年10月号に掲載されたコラム

咬み合わせ/かみあわせ/

「咬合支持」という考え方

 さて、本日は咬み合わせのお話をしたいと思います。ちょっと専門的に「咬合(こうごう)」とも言われたりします。この「咬合理論」については、本当に多くの理論が歯科界で語られてきました。顎関節の位置から、上下接触する歯のポイントまで…。国家試験でも、同じ問題なのに何十年前と数年前では「顎関節の位置の定義」が変わって正解が違ったりと非常に複雑な分野なのですが、その中から1つ。
 なぜこのトピックを選んだのかというと「右下の奥歯ないけど、支障ないから大丈夫だろ」なんて思う「あなた!」を少しでも減らすためです(笑)。
 人の歯は大きく分けて「前歯」「小臼歯」「大臼歯」に大きく分類されます。「咬合」という考え方には「支持」という考え方がとても大事でこれを「咬合支持」と言ったりします。カチって咬んでカチって止まっているのは支持があるからです。
 この「咬合支持」を得るために大事な部位が「左右小臼歯、大臼歯による接触」なのです。
 あれ?前歯は?そう、前歯は定義から外れてるんですね。この4つの場所(左右小臼歯、大臼歯)にしっかり支持があれば、歯の周りの組織や筋肉に掛かる負担を最小とし、食べる等の機能を維持しやすいのです。
 1955年にEichner(アイナヒー)が、咬合支持域を4部位に区分しており、上から「A」「B」「C」となっていて1番上位の「A」は当然支持域4つ。前歯は関係なく前歯が全部なくても支持域が4つあれば「A」となります。
 もう言いたいことお分かりですね!前歯がどれだけあっても、1カ所でも支持域を失えば「B」以下に落第です(「C」は支持域「ゼロ」ですが…)。つまり、今どこか1カ所でも支持域を失っている方は前歯がキレイで食べるのに慣れていても「将来崩壊のリスク」が上がっているということです。失った支持域を補いどうやって「A」を目指そうか。歯科医師はそんな事も考えているのです。


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