診察室では伝えきれないこと Vol.74~愛媛経済レポート~令和3年3月号

~診察室で伝えきれないこと~

愛媛経済レポート

令和3年3月号に掲載されたコラム

誤嚥性肺炎/菌血症/細菌/誤嚥

お口の中が全身に影響する2つの経路とは?

先月はこのタイトルで記事をあげましたが、患者さんから次の様な質問を受けることがあります。「お口の中が全身につながっている事はよーく分かりました。ただ、もう少し原理を詳しく教えていただけないでしょうか?」。そこで今回は、少し具体的にどういった経路で影響するのか!を視点に記事を書きたいと思います。

突然ですが、大事なことなのでまず菌血症について(笑)。菌血症は「傷や臓器の細菌巣から細菌が流出し血液中に浸入して、無菌であるはずの血液中から細菌が検出される状態のこと」ですが、実はこれ、歯周病の方のお口の中では日常的に起こることなんです。歯周病等で歯肉が腫れていると、歯磨きをするたびに容易に出血します。これは毛細血管が炎症により拡張しているためですが、ここから細菌が血液中に浸入、血流に乗って様々な全身疾患との関わりが注目されています。これが1つ目の経路。

それではもう一つの経路は?それは血液を介してではなく、口の中の細菌を直接飲み込むことで影響を与える経路です。飲み込むと基本的には食道を通じて胃で処理されますが、「誤嚥」という言葉を聞いたことはないでしょうか?食道を通るべき食べ物や唾液が、誤って気管に入ってしまうことです。高齢になると誤嚥しやすくなります。本来食道を通るべき唾液は気管を通じて肺へ。誤嚥性肺炎による死亡者数は2030年になると12万人を越えるという予測も出ています。これは老衰と同じレベル、無視できません。これが2つ目の経路です。

どちらの経路も、「細菌の少ないお口の中の環境」を保つことが大きな鍵です。

最後に・・・なぜ「歯を磨きましょう」ではなく「お口の中をキレイに」と最近言われているのか?それは、歯の表面積は口の中で25%しかないから。舌、粘膜、歯肉等残りの75%のケアも含めて「キレイなお口」なんです。


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