診察室では伝えきれないこと Vol.69~愛媛経済レポート~10月号

~診察室で伝えきれないこと~

令和2年10月号に掲載されたコラム

TCH/むし歯/歯周病

「力」という要素について その2

前回の復習からいきましょう。咬む力は、人間の体重以上の力を出すことも可能。夜の歯軋りは体重の倍以上の力が歯に掛かっていると言われています。予防の概念がすすみ、歯が残れば残るほど今後は「力のコントロールは必須」。そして食事も含めて1日の歯の接触時間は、17.5分が最適―というお話を書かせていただきました。

さて、ここから本日の本題。みなさんは「TCH」という言葉をご存知ですか?TCHとは「Tooth Contacting Habit」の頭文字をとったもので、意味は“上下の歯を無意識にくっつけている癖”のことをいいます。「え?歯と歯は普段くっついているんじゃないの?」と思ったあなた、あなたはもう黄色信号!まずは、このコラムで正常の状態を知りましょう。

リラックスしているお口の中の正常な状態とは、上唇と下唇が接触していても、上の歯と下の歯が接触しておらず、2~3ミリメートルの隙間があります。そして舌の先端は上の前歯の裏側の歯茎に軽く接触する程度。この2~3ミリメートルの隙間を専門的には「安静空隙」といい、顎の周りの筋肉や関節がもっとも安定しリラックスしている状態とされています。

常に歯をくっつけている癖がある方や、下の位置が下顎にある方!この方は顎の関節や筋肉が緊張している状態にあります。また、普段から食いしばりをしている人は、お口の中が慢性的に陰圧の状態になり、舌圧痕といって舌がボコボコした形になっています。

TCHにより、常に上下の歯が接した状態が続くと、歯に圧力がかかり、歯を支える歯槽骨にも過度な負荷がかかるため、歯や歯周組織、そして全身に大きな影響があると言われています。

癖といっても侮るなかれ!なかなか直すのが難しいのが現実。まずは今から鏡の前に行って舌の形をチェック。それからTCHのチェックをしてみてくださいね。


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